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日本生殖医学会理事長と男性不妊治療の第一人者によるスペシャル対談!(前編)

苛原 稔先生
日本生殖医学会理事長・徳島大学医学部産婦人科学教授

1979年徳島大学医学部卒、産婦人科医。日本産科婦人科学会専門医や日本女性医学学会認定医としても活躍。

岡田 弘先生
獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科主任教授

1980年神戸大学医学部卒 泌尿器科医、日本における男性不妊の第一人者。30年以上にわたり、日本で最も多くの男性不妊患者の治療にあたる。

不妊治療を受ける夫婦は増加。誰もが人ごとではない時代に

国立社会保障・人口問題研究所の「第15回出生動向基本調査」によると、子どもがいない夫婦の5.5組に1組以上が不妊の検査や治療を受けたことがある(受けている)と回答。不妊治療は、もはや身近なものになっている印象を受けますが、実際のところはいかがでしょうか?

苛原先生:私が産婦人科医の道へ進んだ約40年前と比べると、不妊治療を受ける夫婦の割合は非常に増えてきているという印象を受けます。

岡田先生:私は30年以上にわたって男性不妊治療に携わっているのですが、苛原先生とまったく同感です。ちなみに、不妊というのは「健康な夫婦が避妊をしないで夫婦生活を送っているにもかかわらず、1年間妊娠しない状態のこと」を指します。

不妊治療増加の要因は、「晩婚化」「晩産化」

では、不妊治療を行う夫婦が増加している要因は何なのでしょうか?

苛原先生:大きな要因として挙げられるのは、女性の社会進出の影響による「晩婚化」「晩産化」でしょう。いまや、30歳以上で初産を迎えるのが当たり前という時代。加齢にともなう「卵子の老化」によって、女性の妊娠率は30代後半になると急速に減少するため、不妊治療に頼らざるを得ない夫婦が増えたのです。

岡田先生:昔と比べて変わってきてはいるものの、日本はまだまだ女性が子どもを生んでからのキャリアを描きにくいのが現状です。そのため、「晩婚化」「晩産化」が進んでいるのでしょう。たとえば北欧には、育児休業中の所得補償制度が存在する国や、育休後は同じ給料で同じ職場に復帰させなければいけないという法律がある国が存在します。そういった取り組みによって、北欧の出生率は大きく改善したのです。

苛原先生:女性は、妊娠適齢期とキャリアを積む時期が重なってしまいがち。北欧のように、出産後も安心して働ける環境が社会全体に浸透しない限り、「晩婚化・晩産化→不妊治療」という流れを食い止めることはできないでしょう。

岡田先生:また、意外に思われるかもしれませんが、結婚していても性交渉が一度もない「未完成婚」が増えていることも、不妊治療増加の要因のひとつとして挙げられます。間違った方法によるマスターベーションなどによって、ED(勃起不全)に陥ってしまう男性が少なくないのです。

男性が不妊治療に参加するタイミングが遅いことが大きな問題

そのような中、不妊治療や生殖補助医療が抱えている課題は何でしょうか?

苛原先生:やはり、一番は男性の不妊治療に対する意識の低さではないでしょうか。それ以前に、「男は何歳になっても子どもをつくることができる」と思っている人があまりにも多すぎる。1~2年ほど前、岡田先生に徳島で講演してもらいましたよね。卵子だけでなく精子も老化するという話をしてもらったのですが、その事実を知っている方はほとんどいませんでした。

岡田先生:それに加えて、実は不妊の原因の半分は男性側にあるという事実もあまり知られていないのです。WHO(世界保健機関)の調査によると、不妊の原因は41%が「女性のみ」ですが、24%が「男性のみ」、24%が「男女とも」という結果が出ています。ところが、不妊治療は女性が行うものといったイメージがまだまだ強いようです。そういった知識不足によって、男性が不妊治療に参加するタイミングが遅れてしまうケースが多いのです。このことが、不妊治療や生殖補助医療を行ううえでの、大きな問題点になっていると言えるでしょう。

苛原先生:「晩婚化」「晩産化」の影響で、子宮筋腫や乳がんといった女性特有の病気のリスクが高まる30代後半に、不妊治療をスタートさせる女性が増加。病気の治療と不妊治療をどのように両立させていくのかというのも、近年の新たな課題だと思います。

岡田先生:不妊治療を受けられる病院やクリニックが、大都市に集中してしまっているのも大きな問題です。男性不妊の治療については特に偏っており、専門医がいる病院やクリニックは四国や九州には存在しません。

苛原先生:産婦人科でも、同じような状況です。日本生殖医学会が認定する生殖医療専門医が、ひとりもいないエリアも少なくありません。東京や大阪といった都市部とその他エリアの格差をなくし、どの地域でも最先端の不妊治療が受けられる体制の構築が急がれています。

岡田先生:そのほか我々医師としては、不妊治療の成功率の向上に向けてより一層力を注いでいく必要があると考えています。

日本生殖医学会理事長と男性不妊治療の第一人者によるスペシャル対談!(後編)

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