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不妊症や流産に影響アリ!? 男性の加齢と不妊の関係

久慈 直昭先生
東京医科大学 産科・婦人科 

昭和57年慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部産婦人科教室入局。
平成13年同大学産婦人科講師、平成26年より現職。生殖医学、不妊症を専門とする。

男性はいくつになっても子どもがつくれる!?

女性は年齢を重ねると排卵がおこらなくなり、妊娠・出産することが難しくなります。けれども男性は、そうした年齢によるハンデがない、と思っている人もいるかもしれません。実際、成人男性の精巣では、生涯を通じて精子がつくられます。けれども年齢を重ねることによって、その機能は低下していくのです。精巣の大きさは年月とともに小さくなり、男性ホルモンをつくる力もダウンします。ただし精巣がある限り、精子をまったくつくれなくなる、という事態には陥りません。

そのため女性の閉経のように「もう子どもをつくることができない」という明確なサインがなく、非常に個人差が大きいことから、男性は「子どもがつくれるのは○歳まで」という定義が定まっていません。ですから、年齢を理由に男性不妊の治療をあきらめることは難しいようです。とはいえ、体外受精や顕微授精などの生殖補助医寮の成績データを見ることで、男性の加齢と妊娠率の関係についてわかることもあります。そのいくつかを見ていきましょう。

年齢とともに、精子の数は減っていく?

1日あたりにつくられる精子の数は、年齢とともに減っていくと言われています。けれども精液の量そのものが減っていくため、精子濃度はさほど変わらない、というのが一般的な見解です。年齢別の精液の所見をまとめた表を見てみましょう

30代と50代を比べると、精液の量そのものは3~22%低下。精液の中の精子がどれだけ運動しているかを示す精子運動率も3~37%、正常な形をした精子の割合である精子正常形態率は4~18%低下することが示されています。いずれも非常に個人差が大きいものの、とくに加齢によって低下しやすいのは、精子の運動率であることがわかります。

高齢の男性の場合、パートナーの女性も年齢を重ねている可能性が高いため、こうした精液の状態がどこまで不妊症に影響しているかを分析するのは、非常に難しいでしょう。けれども運動している精子が少しでも存在すれば、体外受精や顕微授精によって妊娠・出産を実現することが可能。一概に、「加齢による精子量の減少が不妊につながる」と言えないのが現状なのです。

男性の加齢と不妊治療の関係性

では、男性の加齢にともなって、体外受精や顕微授精の成功率は下がっていく のでしょうか。活溌に動いている精子が存在していても、精子の機能そのものが低下していれば、自然妊娠率と同様に、体外受精や顕微授精などの妊娠率も下がる可能性が高いでしょう。男性の加齢と生殖補助技術による妊娠率については、加齢によって成績が低下するというものもあれば、あまり変わらないという報告も存在。ただし最近では、男性が35歳を過ぎると生殖補助医療による出産率が低下する、という報告もなされています。

比較的多くの症例を対照した研究によると、パートナーの女性の年齢などの影響を除いても、男性の加齢によって自然流産の確率が上がるという報告も。具体的には、25歳未満の男性と比べ、45歳より高齢の男性の自然流産率が約2倍になるとするレポートもあります。さらに、40歳以上の男性が自然流産に与える影響は、30歳以上の女性の流産率に相当する、という意見もあるのです。やはり男性の加齢も、不妊症と無関係ではないと考えられます。また、男性の加齢によって遺伝病発生の危険が高まると言われていることにも注意が必要です。

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