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不妊の約半数は男性に原因が! 男性不妊の治療って何をするの?

久慈 直昭先生
東京医科大学 産科・婦人科

昭和57年慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部産婦人科教室入局。
平成13年同大学産婦人科講師、平成26年より現職。生殖医学、不妊症を専門とする。

男性不妊の治療は泌尿器科で行われる

「不妊治療」と聞くと、産婦人科での治療を思い浮かべる人も多いでしょう。けれども男性不妊の場合、その治療の多くは泌尿器科で行われます。治療は、それぞれの不妊の原因に沿って行われるのが一般的です。

何らかの理由で性交に関する関心や能力が阻害される「男性性機能障害」が見られる場合は、性交渉ができるよう勃起不全(ED)の治療薬などを使用。また誤ったマスターベーションの方法に慣れてしまって性交時に射精できない患者には、器具を用いてマスターベーションの方法を矯正します。射精時に精液が棒状に逆流する「逆行性射精」には、抗うつ剤が処方されるケースもあります。

これらの治療を行っても性行為や射精がうまくできなかった場合は、人工授精にステップアップ。人工授精とは、採取した精液から成熟した精子だけを子宮内に注入する治療法です。性機能障害の治療を希望しない場合、もしくは夫婦の年齢が高い場合は、すぐに人工授精に踏み切るケースも多く見られます。

受精・着床できる精子をつくるための治療も

性行為を重ねても、もしくは人工授精を試みてもなかなか子どもを授からない場合、内科的な治療で精子の質をよくする治療を開始。まずは、精子形成や射精を阻害する可能性のある生活習慣を見直します。具体的に男性不妊の原因とされているのは、薬剤や喫煙、アルコールの過剰摂取など。サウナやノートパソコンのヒザ上での使用など、生殖器を高温にさらすことも避けるようにします。そのうえで、漢方薬やビタミン剤、血流改善薬などを用いて、精子の質の向上に努めるケースも。精子の数が少ない場合や運動率が低い症例などが対象ですが、まだまだ明確な有効性が証明されている治療法は少ないのが現状です。

脳の視床下部もしくは下垂体の機能不全によっておこる精巣機能不全(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症)には、「hCG、ESH療法」と呼ばれる内分泌療法が行われます。治療スタート時に無精子症だったと患者が、この治療により精子の質が改善され、不妊症が解消されたケースもあるのです。

精子の形成に支障をきたすとされる「精索静脈瘤」の場合は、結紮手術を行うのが一般的。逆流の原因となる精巣の静脈をしばって血行を止めることで、術後に精子形成機能が改善され、妊娠率が向上するケースも報告されています。

これまで見てきたいずれの場合でも、男性の不妊治療と並行しながら人工授精を試みるケースも多くあります。

高度の精液性状低下や無精子症の治療って?

さまざまな方法を試みても精液中から精子を回収できない場合、精巣から直接精子を採取する「精巣内精子回収法(TESE)」が行われます。これは陰嚢の皮膚を小さく切開し、精巣組織の一部を採取する方法。その組織に精子が確認された場合、顕微授精によって卵子と受精させます。

ただし、精巣内での精子形成がなされていなかった場合は、陰嚢の皮膚をもう少し大きく切開して精巣を体外に出し、手術用の顕微鏡を用いて精子形成のある場所を探します。精管に閉塞がないのにもかかわらず、射出精液中に精子がまったく含まれていない「非閉塞無精子症」の場合は、残念ながら精子を採取できないケースもあります。

精子の通り道に閉塞があるために精子が通れなくなっている場合には、その部分を取り除く「精路再建手術」が行われます。手術の種類は大きく分けて3つ。閉塞部位の末梢側と中枢側の精管同士をつなぎあわせる手術、精巣の一部を切開して精管とつなげる手術、閉塞した射精管を開通させる手術です。

これらの精巣精子採取術を行っても精子が得られない、もしくは妊娠に至らないこともあるのが現状。その場合は、夫以外の提供者の精子を用いた人工授精治療を考慮しはじめる夫婦も存在します。

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