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治療で授かる確率はどのくらい? 不妊治療(生殖補助医療)とその効果

久慈 直昭先生
東京医科大学 産科・婦人科

昭和57年慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部産婦人科教室入局。
平成13年同大学産婦人科講師、平成26年より現職。生殖医学、不妊症を専門とする。

排卵と受精を補助することからスタート

不妊治療は一般的に、排卵日にあわせて性交渉をもつ「タイミング法」からスタートします。排卵予定日の数日前に、経膣超音波検査で卵巣内の卵胞(卵子が入っている袋)の大きさを測定。これをもとに排卵日を推定し、妊娠しやすいタイミングである排卵日の2日前から排卵日までに性交渉をもつよう指導されます。

タイミング法と同時に、排卵誘発法によって排卵をおこさせる治療が行われるケースも。これは内服薬や注射によって卵巣を刺激し、排卵を促す方法です。

タイミング法で授からなかった場合は、人工授精にステップアップします。これは男性の精液から運動している成熟精子だけを洗浄して回収し、排卵日の数日前から排卵日までのタイミングに子宮内へ注入する治療です。厚生科学研究(「生殖補助医療の適応及びそのあり方に関する研究」)によると、人工授精で妊娠する女性の80%が7回目以内に妊娠。3回から4回の治療回数で妊娠する人が多い、との結果になりました。。

1982年から開始された「生殖補助医療」

人工授精でも妊娠に至らなかった場合は、生殖補助医療(ART)にステップアップすることになります。国内で治療が開始された1982年ころは限られた施設でのみ行われていましたが、近年では生殖補助医療を受けられる病院が増えています。

生殖補助治療は、大きく2つに分けられます。一つは、精子と卵子を採りだして体外で受精させる「体外受精」。もう一つは、精子と卵子を採りだし、顕微鏡を用いて人工的に受精させる「顕微授精」です。いずれも精子と卵子が確実に受精した状態で子宮内に戻すため、妊娠率が上がると考えられています。

また体外受精を行った際に複数の受精卵ができた場合、子宮に戻さない胚を凍らせて保管しておく「凍結融解卵・胚周期治療」も可能。溶かした胚を移植することにより、身体に負担のかかる採卵をせずに妊娠の機会を増やすことができるのです。

約35人に一人が生殖補助医療で出生している!?

では、不妊治療を受けることで、どのくらいのカップルが子どもを授かっているのでしょう。日本産婦人科学会の調査によると、2015年に生殖補助医療による治療が行われたのは全国で607施設。424,151回治療周期が行われ、そのうち分娩に至ったのは49,562周期(11.7%)となっています。

凍結しない状態の胚を移植した場合、出産では14.4%、凍結融解卵・胚周期治療では23.0%が生産分娩を達成。生まれた子どもは5万1001人に上り、同年に生まれた子どものうち約20人に一人が生殖補助医療で出生したことになります。

治療成績を2010年のデータで女性の年齢別にみてみましょう。

上記の図をみると、胚移植による妊娠も治療による妊娠も、さらには治療による生産分娩も、年齢を重ねるにつれ下がっていることがわかります。ただし治療あたりの生産率でみると、32歳ぐらいまではほぼ横ばいで、生産率は約20%。その後、1歳につき約1%ほど下がっていき、37歳になると1歳につき約2%と急激に下降しはじめています。39歳では10.2%の患者が生産分娩に至っていますが、40歳では7.7%、44歳で1.3%とかなり厳しい数字になってきます。

さらに流産率をみてみると、31歳くらいまでは20%以下ですが、32歳で上昇をはじめ、37歳からは急激に流産率が上がっています。40歳では35.1%が、43歳になると55.2%の女性が妊娠後に流産を経験しているのです。

このように、生殖補助医療の治療成績は、女性の年齢に大きく左右されることがわかっています。治療を検討するならば、できるだけ早い時期からスタートするほうがいいと言えるでしょう。

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