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どうして不妊症になってしまうの? 女性側・男性側、それぞれの原因

久慈 直昭先生
東京医科大学 産科・婦人科

昭和57年慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部産婦人科教室入局。
平成13年同大学産婦人科講師、平成26年より現職。生殖医学、不妊症を専門とする。

まだまだ解明されていない不妊症のメカニズム

健康な卵子が排卵されて健康な精子と出会い、受精して着床することではじめて妊娠が成立。そこに至るまでには、多くの条件が揃う必要があります。そのため一口に「不妊」と言っても、複数の要因が関わっているケースが多く見られます。また、はっきりとした原因が見つからないカップルが、多数存在しているのも現状です。

現在、「不妊症の三大原因」と指摘されているのが、「排卵因子」「卵管因子」「男性不因子」。このうち排卵因子と卵管因子は女性側、男性不因子は男性側に原因があります。

女性の不妊症の原因って?

まずは女性側の原因から見ていきましょう。下の図のとおり、女性の不妊には以下の5つの原因があります。

①排卵因子
排卵障害がある、つまり正しく排卵がおこっていないこと。さまざまな原因が ありますが、代表的なものにホルモンが正しく分泌されていない、環境の変化などにともなう大きな精神的ストレスがかかっている、急激なダイエットによるものなどが挙げられます。20〜30歳代であるにもかかわらず卵巣機能が極端に悪くなる「早発卵巣不全」も、無排卵がおこる一因です。

②卵管因子
卵管が詰まっていたり、卵管周辺が癒着したりしていると、卵管に卵子がうまく取り込まれず不妊症になります。性器クラミジア感染症にかかってしまうと、閉塞や癒着がおこりやすいので要注意。また虫垂炎(盲腸)の手術など骨盤内の手術を受けた経験がある人や、子宮内膜症にかかっている人も、同様に卵管周囲の癒着が見られることがあります。

③子宮因子
子宮に何らかの問題があること。代表的なものに、子宮筋腫や子宮内膜ポリープがあります。子宮内膜症のなかでも子宮の内側が隆起してしまう「粘膜下筋腫」の場合、受精卵の着床が妨げられるリスクがより高まります。また子宮筋腫の存在は、着床障害をもたらすだけでなく、精子が卵子へ到達するのを妨げることもわかっています、

④頚管因子
頸管粘液の分泌が少ないため、精子が子宮内に到達しにくくなっている状態。子宮の奇形や子宮頸部の手術経験、子宮頸部の炎症などが原因でおこります。

⑤免疫因子
何らかの免疫異常により、精子を妨害する抗体(抗精子抗体)を分泌してしまうこと。なかには精子の運動を止めてしまう抗体(精子不動化抗体)を産出してしまう女性も存在します。その場合、抗体が頸管粘液内にも分泌されるため、人工授精で精子を子宮腔の奥まで注入したとしても、精子が卵管内で動けなくなり、卵子と出会うことができません。

不妊症の検査をしても、これら5つの異常が見つからない「原因不明不妊」も多く存在します。実は不妊に悩む女性の1/3が、原因不明とされているのです。けれども本当に原因がないわけではなく、検査では見つからない原因が潜んでいる、と考えられています。またこの割合は、夫婦の年齢が上昇すると高くなる傾向があります。

男性の不妊症の原因って?

男性不妊の原因は、大きく2つに分けられます。一つは射精がうまくいかない性機能障害、もう一つは精液中の精子の数や運動率が低下している精液性状低下です。精液性状低下には、軽度・中等度と高度・無精子症の2つに分類されています。

①性機能障害
性機能障害は性行為がうまくいかない勃起障害と、膣内射精が困難な膣内射精障害に分けられます。動脈硬化や糖尿病が勃起障害の引き金になるほか、誤ったマスターベーション法が膣内射精を妨げているケースも少なくありません。

②軽度〜中等度の精液性状低下
勃起や膣内射精に問題がなくても、精子の数や運動率が低下していると不妊の原因になります。軽度〜中程度の精液性状低下は、精巣で精子がつくられるときや精巣上体での精子が運動機能を獲得する過程に異常が生じることなどに、原因があるとされています。

③高度の精液性状低下・無精子症
高度の精液性状低下は、精液中の精子の数が通常の1/100以下、もしくは運動率が極端に低い(20〜30%以下)場合をさします。原因は、ホルモンの分泌低下やおたふく風邪による耳下腺炎性精巣炎、停留精巣の手術など。いっぽう精液中にまったく精子が見られない無精子症のなかには、精管や精巣が詰まっているため精子が出てこられないケースも存在します。そうした場合は、閉塞した精子の通り道を手術などで開通させることで、不妊が解消できることもあります。

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