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精液検査以外にも実にさまざま! 「男性不妊」の検査

岡田 弘先生
獨協医科大学越谷病院 泌尿器科主任教授

男性不妊を専門とする泌尿器科医の第一人者。
30年にわたり、最前線にて日本で最も多い男性不妊患者の臨床にあたる。
特に無精子症に対する最先端治療であるMD-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)においては、日本で最も症例数が多い。

検査を受けることで、精子の状態を正しく把握できる

あまり知られていないこともあって、「男性不妊」の検査に対して不安を覚える人も少なくないはず。そこで、男性不妊外来ではどのようなことが行われるのかを紹介しましょう。

まずは、問診票に必要事項を記入。「性欲はありますか」「射精しますか」など、答えにくい質問もあるかもしれませんが、診断を行ううえでどの問いも非常に重要。問診票は、正直に記入することが大切です。その後、問診票をもとに医師との質疑応答を行う「問診」へ。性欲や勃起といった性機能のことから、これまでの病歴や生活習慣のことまで、質問項目は多岐にわたります。

続いて、医師がカラダを見て触る「視診・触診」へ。身長や体毛の量、性器の発育状態からホルモン分泌異常の可能性がわかったり、陰嚢や精管、精巣上体を触診することで「男性不妊」の原因のひとつである精索静脈瘤や精子の通り道である精管や精巣上体がふさがっている事が見つかるケースがあります。

「精液検査」では、マスターベーションによって採取した精液をもとに、精子の数や運動性などをチェック。一般的にはWHO(世界保健機関)の標準値を目安とし、結果がその数値よりも低い場合は「男性不妊」の可能性があると診断されます。ただし、1回の検査で判断を行うのではなく、数値がよくない場合は何度か検査を行ったうえで診断を下すことになるでしょう。また、WHO(世界保健機関)の標準値というのは、セックスをして自然に子どもを授かる場合の最低限の基準値のこと。あくまでも、「妊娠の可能性が低い」という目安であり、この数値を下回ると妊娠できないというわけではありません。

その次に行われるのが「ホルモン検査」。血液検査を通してホルモン分泌異常がないかを調べるもので、5種類ほどの検査項目が用意されています。最後は、陰嚢に超音波を当てる「超音波検査」。精巣の様子がモニター画面に表示され、それを通して精巣の大きさや精索静脈瘤がないかどうかなどを調べます。この検査によって、精巣がんが見つかるケースも。ちなみに、男性不妊患者は一般男性とくらべて精巣がんが見つかる割合が10~100倍高いとされています。ですから、不妊の相談で医療機関を受診するのであれば、必ず超音波検査をして精巣がんのチェックが行える施設を選びましょう。

そのほか、場合によって行われる検査もいくつか存在します。「染色体検査」は、無精子症や重度の乏精子症の場合に行われる検査。現在は診察目的では行われていませんが、かつては無精子症や重度の乏精子症の場合に、「精巣組織検査」も実施されていました。また、脳下垂体に腫瘍がありホルモン分泌が低下している事が、精子をつくることを妨げていると考えられる場合や、精路通過障害が疑われる際に行われる検査として「MRI検査」があります。

「男性不妊」の検査を受ける際は、産婦人科ではなく泌尿器科へ

すでに「男性不妊」の検査を受けた人のなかには、「自分は精液検査しかしていない」という人も少なくないでしょう。実は、パートナーの女性と一緒に産婦人科で受診した場合、男性が受けるのは精液検査のみというのが一般的。精子の数や精子の運動率などの結果がわかるだけで、より詳しい検査が必要な場合は、実際に体を診察してもらえる泌尿器科を紹介されます。

泌尿器科では、「精子の数が少ない」「精子の運動率がよくない」といった結果に加えて、その原因究明を行い、さらには適切な治療までを受けることが可能。「男性不妊」の原因は不明というケースも多いのですが、せっかく検査を受けるなら産婦人科ではなく、泌尿器科を受診するようにしましょう。男性にとっては産婦人科よりも敷居が低く、受診しやすいのも魅力です。

最近は、獨協医科大学越谷病院のリプロダクションセンターのように、不妊症をカップルの病気として男女両方を1つの施設で診療する施設も誕生してきています。

ちなみに数は少ないものの、泌尿器科医のなかで「男性不妊」を専門としている医師も存在。「男性不妊」に悩んでいる人は、それら専門医を訪ねることもおすすめです。

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