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「人生設計の前に精子チェックを」男性不妊当事者が語る男性妊活談

田中直樹さん(仮名)は製造業の開発職として勤める35歳。結婚五年目で奥さんは33歳主婦。新しいモノが好きな田中さんは、ガジェット感覚でSeem(自宅で精子の濃度と運動率を測定できるキット)を試したといいます。結果、自分の精子の濃度と運動率を知り、妊活を自分ごととして捉えるように。病院の検査で「乏精子症」と診断され、本格的に妊活に取り組んだ過程を通じて、より深く夫婦の人生設計を考えるようになったそうです。まだ妊活を始めていない男性にこそ知っておいてほしい経験談をお伺いしました。

Seemで精子の状態を調べてから、「妊活」が一気に自分ごとに

ーー妊活を始めたのはいつ頃からですか?

田中:2年前にSeemを使った頃、「そろそろ子供が欲しいよね」と奥さんと話して、奥さんは基礎体温を測っていました。ただ、それ以上に妊活らしいことは何もしていませんでしたね。

ーーSeemを使ってみた結果、精子の状態が良くないことがわかったんですよね?

田中:はい。濃度と運動率のいずれも良くありませんでした。ただ、調べてみると、精子の状態は仕事のストレスや健康バランスに大きく左右されると書いてあったので、一回目のチェックで結果が悪かったのは正直信じてなかったんです。たまたま悪い結果が出ただけだろう、と。なので、すぐに二個目を購入しました。ですが、二回目のチェックでも結果は変わらなかったんです。それから妻にも測定結果を話し、病院に行くことにしました。検査の結果、「乏精子症」と診断され、自然に妊活をしていても子供が望めない状態であることがわかりました。

ーーSeemを使い始める以前は、特に何も妊活の意識をされていなかった?

田中:そうですね。それまでは結婚式や新婚旅行といったイベントがあったので、あえて作らないように気をつけていました。妊活についても当初は、正直他人事で。「子供ができるのってこんなに難しいんだ」といったことも知らなかったんです。ましてや、自分の精子の状態が悪いかもしれないといった不安も一切ありませんでした。不妊の原因が男性側にもあることに関しての知識もほとんどなく、「100人に1人くらいの割合なのではないか」くらいに考えていましたし、自分がそうした立場になるとは全く考えていなかったです。ただ、実際にチェックした結果をみてからは、一気に自分ごとに切り替わりました。

妊活をきっかけに、より深く夫婦で人生設計を考えるように

ーーSeemを使う前と使った後で、妊活に対する印象は変化しましたか?

田中:Seemのある世界とない世界では、圧倒的に違ったと思います。一般的に精子の状態を調べることは、男性にとってプライベートというかセンシティブな部分じゃないですか。男に生まれたのに、生殖能力がないかもしれない。私自身は、タバコも吸わないし、お酒もそれほど飲まない。不摂生をしているわけじゃないのに、結果を知ったときはどうしてなのかと一ヶ月ほどはショックでした。

田中:実際に病院に行くと夫婦で受け入れてくれる病院が少ないことを知り、不妊治療の難しさも感じました。検査まではしてくれても、検査結果が分かった後に受け入れてくれる病院が少ない。私たちが最初に行った病院は受け入れてくれたのですが、半年後に閉院になってしまいました。代わりに紹介してもらった病院は予約が取りづらかったり、そもそも通うのも大変で。

ーー田中さんように、男性側に不妊の要因があるケース(今回の場合「乏精子症」)ではそもそも婦人科で診てもらえないことも多いそうですね。

田中:女性側の不妊治療は、ホルモンバランスを整えたりとか、いろんな薬で対処療法はあるんですけど、男性不妊は原因のわからないものが半分くらいあって、婦人科だけではなくて泌尿器科もある病院に行く必要があるんです。しかも不妊の原因が男性にあると不妊治療のステージが一気に上がっちゃうんですよ。状況や施設にもよりますが、私の場合、顕微授精しか難しいですってなると、途端に100万200万とか高額になってしまう。そこに対してもすごく戸惑いがあったので、治療というか、夫婦で、これからどういう気持ちで挑もうかとか、自分たちのライフスタイルをどうしようかっていう、相談の方が多かったです。

ーーそれから田中さんは妊活にどのように取り組まれましたか?

田中:食事療法、針・鍼灸、体調改善などを試したりしました。明確な原因もわからないので、相談できる人もなかなかいないので悩みました。

ーーSeemを利用された後は、どのように奥さんとコミュニケーションを取られましたか?

田中:まず、「結果があまり良くなかったこと」は伝えました。それから病院で検査を受けることになり、薬を処方してもらいました。結果的に、半年ほど通い、毎月検査をして経過を見ていきました。それでも、あまり結果は変わらず。その過程で妻とは、「本当に子供がいるのか、いらないのか」あるいは「子供がいない夫婦はどうなんだろう」といった話し合いを重ねました。

ーーSeemでの結果が良くなかったことに関して、伝えづらさもあったのではないかと思うのですが、奥さんにはすんなり話せましたか?

田中:結果もすぐに見れたので、話すこと自体にはそれほど抵抗はありませんでした。妻のリアクションも「ふーん、そうなんだ」と意外に冷静でしたね。先ほども言ったように、だんだんと「そこまで大変なら、別に子供いなくていいよ」といった会話に変わっていきました。奥さんの友達は数百万円の費用をかけて妊活しても子供ができず、不妊治療でホルモンバランスが崩れて体調も悪くなってしまったそうです。体力的にも精神的にもかなり辛いのに、「そこまでして、子供を作る理由はどこにある?」と二人で話しました。それまでは漠然と考えていた人生設計について、お互い具体的に考えて話し合うようになりましたね。

ーー現在は妊活をされていないのでしょうか?

田中:病院に行くのは止めました。お互いまだ30代前半なので、これからもう一回欲しくなれば妊活を再開するのもアリだけど、一旦は「(子供が)できない人生をある程度受け入れるスタンス」で考えるをやめています。妊活にあくせくするよりは、二人で海外旅行に行ったり、人生を楽しめたらいいよね、と。

「独身時代に(Seemを)知っていれば使いたかった」

ーー「妊活」といえば、まだまだ一般的には「女性のもの」といったイメージがあります。夫婦のどちらかではなく、二人で妊活に取り組むことの大切さについてお伺いできますか?

田中:たしかに男性が妻任せになってしまうことが多いと思います。ただ、カップルや夫婦で生理周期をシェアできるアプリもあります。奥さんが体温を毎日記録することで、旦那さんも「排卵期」や「生理前」の状態を把握することができます。女性は生理周期に合わせて体調が変わることもありますので、サービスを使うようになってから、「高ストレスな期間」とか「絶好調な期間」といった状態も気にするようになりましたね。たとえば奥さんがイライラしていても、こちらは原因を知っているので、「そっとしておこう」と行動を変えられました。

ーー妊活の経験者として、まだ経験していない男性の方に何かメッセージはありますか?

田中:仲の良い男友達に、「精子の状態があまり良くなかったこと」を話すと、「元気ないのか?」とかいっていじられたりするんです。裏返すと、「俺は元気があるから大丈夫なんだ」と思っている人が多い。自信があるないに関わらず、とりあえず一回は調べてみた方がいいと思います。自分に性欲があるかないかは関係なく、精子の状態はあくまでも別の話ですから。「会社の健康診断で一度支給してもいいのでは?」くらいに思いますね。

病院へ行くとわかるのですが、採精室は「いきなりここで試す!?」といった印象を持つ場所で、相当な勇気が要ることだと思います。一方で、Seemであればドラッグストアでも、ネットでも手軽に買うことができる。誰にも知られることなくポストに届き、自分一人でチェックできるのは一番ハードルとして低いと思います。

田中:自分ももし今よりも若いときにSeemを知っていれば、もっと早く使いたかったです。それこそ独身のときでも、チェックしたかったですね。今の奥さんは「(子供が)できなくてもいいよ」と言ってくれる人だから良かったですが、家の購入を含めて人生設計に大きく関わる部分だと思いますので。実際、私たち夫婦は将来子供が二人できることを想定し、子供部屋のある家を購入してしまいましたから。パートナーの有無に関わらず、男性にはまず使ってみてほしいです。

ーー最後に、これから妊活を始めようと思っているカップルの方へメッセージをいただけますか?

田中:「お互いのことを知ること」ですかね。先ほど生理周期を男性側にもシェアできるアプリを紹介しましたが、相手の状態を知らないことで傷つけてしまったり、しなくてもいい喧嘩をしてしまうことがあります。身体の状態によって女性の気持ちが変わることを知ることが、スタートラインになりますので。逆に男性は逆に精子の状態を調べて共有することも重要だと思います。繰り返しになりますが、まずは相手について知る。そして、自分についても知る。まずは「知ること」から始めて、コミュニケーションを深めていくことが大切ではないでしょうか。

(テキスト:長谷川リョー 写真:清水舞)

2020年3月インタビュー実施